高校時代、故吉村昭さんの小説を狂ったように読みまくりました。

最も印象に残ったのは、2017年にビートたけしさんが主演された「破獄」と、表題の「三陸海岸大津波」です。「破獄」については別の機会で書かせていただこうと思います。

明日は3.11から丸7年です。本作品は明治時代の東北大津波で標高50m以上の地点まで津波が到達した証言を盛り込むなど、高校時代の私の津波の考え方を根底から覆すような内容が盛りだくさんであり、半ば半信半疑な気持ちながらもあっと言う間に読み切り、何度も反復して読んだ記憶があります。

その小説を読んだ約17年後に、吉村昭さんが描かれた内容、ほぼそのままの地震が実際に発生した時、吉村昭さんの鋭い洞察力と、明治の大津波の記憶が薄れつつある被災者の記憶や文献を淡々とかつ事細かに取材された作家魂を改めて感じたものでした。

その他、戦艦陸奥の謎の爆沈をテーマにされた「陸奥爆沈」や「関東大震災」、沈没した潜水艦に未浸水区画があり当時のままの姿で窒息死した乗員が発見された「総員起こし」、沖縄戦の鉄血勤皇隊員の奇跡の生還を描いた「殉国」などなど、豊富な取材、証言内容に基づく事実が淡々と描かれており、何とも言えぬ気持ちになりながらも、読み応えのある作品ばかりです。

昨今のネットの戦争関係の記事では味わうことのできない、生の当事者の貴重な息遣いまでもが聞こえてまいります。まだ吉村昭さんを知らない歴史好きの方がいらっしゃいましたら、是非お読み下さい。